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ヨドバシのサイトについて

ここ数日ヨドバシのサイトがリニューアルに失敗して話題になっている。たしかに使い物にならない。
色々見たらキノトロープというその道では非常に有名なサイト制作会社が開発をおこなったらしい、自分の所のCMSシステムを利用したらしい。

多分ウェブ制作会社にいる人は、キノトでも失敗したって事はすげーむずかしかったんだろうなーとおもっているだろう。
でもシステム開発会社の人間は、なんでこんな聞いたこともないような会社にやらせて、しかも大失敗、テストとかやってねえの?とか思っているだろう。


自分はシステム開発会社でECサイトの開発をやってきて、今はサイト制作系の業界にも突っ込んでいるのでコメントしてみる。

システム開発会社と、サイト制作会社は別物

できあがる物はウェブサイトということで大体似ているのですが、基本二つは別物です。
どっちが優れている物、というわけではないのですが、基本的にプログラマー中心か、デザイナー中心か、という感じで大体理解してよいです。

多分この思想の違いで一番違うのは、設計、見積もりのやり方ではないでしょうか。



まずシステム開発会社はシステムを「プログラミング等」と見ます。
まずお客さんにどういった物がほしいのか、どういうデータをどんなときに表示させるのか、そういった事をヒアリングします。
当然連携部分をキッチリと考慮し、開発の前に綿密に下調べし、結構な手間をかけて見積もり書を出す。*1
全体像が見えていないのに見積もりなんてとんでもない話で、機能数や画面数をだしてやっと概算見積もりが出ます*2

仕様は絶対であり、約束であり、契約です。この範囲内であればデスマーチしてでも作り上げるのがシステム開発会社。*3
仕様がかたまったならば無事見積もりが出せ、あまり根拠のない値引きとかは考えられません。だってごまかす余地があんまりないから。



サイト制作会社は上とちょっと違います。ちょっとばかり話をしたら、いきなり「提案」します。
提案とはわかりやすい所だと「見栄え」や「目標」、コンサルティングみたいな所からはいります。
ブランディングがどうだーとか、SEOがどうだーとか、導線がどうだー、テイストカラーはどうだーとか…そういう所から入ってきます。
現状のデータがどうだとか、連携がどうだとか、今どれくらいのアクセスがあるだろうかとか、そういう事はあまり重視されない。

特に違うのが、見せる仕様書(といっていいのかわからんが、その扱いになってる)が「絵」だという事です。
とにかくパワポ、いやイラレやPSDのファイルで仕様が決定していきます、この見栄えはお客さんの顔色を見たり、見積もり次第でどんどんと変えられます。
まあこの時点では「イメージ図」であり、ポンチ絵(ラフスケッチ)ばかりだったりするのですが、まあ綺麗*4

見積もり額や期間はお客さんの都合に合わせます。ぼったくるというわけではなく、相手の懐を見ながら提案がえらばれ、自動的にフィットしていくのです。



どうでしょう、見積もりの作り方一つとっても(といってもここが一番違う所だと思うのですが)全く違うやり方なのが解るのではないでしょうか。

とはいえ、近年はどっちも歩み寄りというか、クロスオーバーが起きており、中間のやり方をしている会社もやまほどあります。
ただ、システム会社の営業がチョーシ良く返事して適当な金額でとってくるのと、サイト制作会社のノウハウある*5提案とは差があります。一緒にしてはイケマセン。


サイト制作会社は提案〜見積もりフェーズで強い

速攻で絵やポリシー、なんか聞いたことある横文字の提案をだすので、サイト制作会社は営業に強い。
提案決定をする「えらいひと」が解る言葉でしゃべり、カッコイイ言葉が並ぶ、そして一目でできあがりが理解できるような資料を出してくる。

システム開発会社は大抵表やデータで仕様がどうとか、DBがどうとか、連携がどうとかぱっとみてよくわからないことばかりを自分勝手にw言う。


結果として心証がどんどんとサイト制作会社に傾く。これはしかたないことですね。


後、前述しましたけど見積もりに対して「このくらい機能をけずればこれくらい安くします」とかややこしい事をいうシステム開発会社にくらべ、
「じゃあざっくりこれくらい安くしましょう」というこれまた非常にわかりやすい提案をしてくるのだ、これはグラっとくるぜ。


仕様変更にも強い?

私が見た限りですが、サイト制作会社は根っこの方の仕様がかわるような要求も受け入れます。
たとえばいきなり検索画面にDBにないようなデータを出せと言われたりして、DBや管理ツールを始めものすごい手戻りさせるとか。
むしろいきなり自分から首を絞めるような提案も「良くなるとおもったから」と、バンバンしたりします。


こんなのはシステム開発会社の人間からすればデスマーチ必死なので、受け入れはキチガイ沙汰だとしか思えないですが、彼ら(というより制作会社のマネージャ)はお客様至上主義というポリシの元に当然だと思っているので請け合います。*6


このポリシの差は、成果物を自分の「作品」とおもっているか否かに関わっているように私は感じました。
サイト制作会社の方々はシステム開発会社にくらべ、成果物に対してシビアな目で見ています(…見栄えや機能、クリエイティブ性の高いシカケには)。
ちょっとくらい歩兵、もとい制作部隊が死にそうになったり、赤がでそうでも、良い物を作る事が自己のブランディングにつながると考えてがんばる傾向があります。
(デザイン業界は体育会系です)

これは長所とも短所とも言えます。
お客からみたらサイトが良くなるのは良い事なんですが…、やはり間に合わないということもやっぱりあるわけです。


というか、私が思うにスケジュール管理という概念がちょっと薄いです。「スケジュールは工数にあわせて切るもの」ではなく、「スケジュールに工数を合わせる」という発想だという事を散見します。
結果として見えない所の手抜きは恐ろしいです。チューニングなどは一切されない事が多いです(出来る人がいない、という所も多いが)。コードはコピペの固まりになってたり、優秀な人が一人で書いててその人のクセがすごい事になってたりします。

テスト?ああ、お客チェックの事ね?

所々でテストをやります。これはどちらでも同じですけど、意味が違います。

サイト制作会社のテストとは「見た目がお客様の好みに合うか」という所に絞られており、サイトの負荷とか、そういうのはあんまり考えません。
ここでお客がちがうなーとか言い出したら、容赦なく仕様を変える

そもそもちゃんとしたPGがいない事も問題

PG=Flasher or PHPerであることが多いです。

サイト制作会社ではものすごくPGの地位が低い。なぜなら上司にあたるマネージャはスーツ(笑)(蔑視的な意味はなく、表現しやすかったので)であり、そもそも価値観や評価基準が違う。
だから出来るPGにとっては居心地が悪いし、しかもそういった出来るプログラマはマジ引っ張りだこなので転職をくりかえしたりフリーになっていく。


逆にPGは期待されていないので、できるような、できないような、という微妙なラインの人間でも全然OK。
PHP4しかかけなくても仕事がある。
mi○iの右側の広告に去年あたりずっといた、「派遣で元コンビニバイトが500万のウェブプログラマに!」という人間がどこにながれているか…まあ…ねえ…。

自社には制作部隊なんていない事も多い。

ほとんど外注にだして、打ち合わせと資料をまわしているだけ所も多いです。
(ただ、提案はやるので、単に中抜きしているわけでもないんですが)

大抵の外注先は恐ろしいほど単価が低いです。


この辺り公然なのかしりませんが、業界(サイト制作会社は、基本的に広告業界)内でのエコシステム?のような物があり、その中で仕事をぐるぐる回している様です。
結果微妙な会社でもコネで仕事にありつくことができるのですが、逆に相当できるようになっても、コーダーはいつまでたってもコーダーです。浮かび上がれません*7

XMLでデータをサーバーから引いてきて、サーバ連携するだけで単価が上がるのがホント謎ですね。*8


正直この業界にマットウなシステム開発会社ががんがんはいってきたら相当数が駆逐されて死ぬんじゃないの?って思っているのですが、
彼らは広告業界でつかわれている思考や言語を用いるので、入っていくのは難しいのかな…。
まあ、そもそもFlash等の需要が大きく、ASがうまいより動きを旨くつけられる人のほうが需要が高いので、そもそも入っていくのは困難か?


しかしサイト制作会社は悪くない、やり方が違うだけ

諸々サイト制作会社が悪いような事をかきましたが、彼らは彼らの方法でやっているだけです。

サイト制作会社の強みは提案です。カッコイイキャッチをのせたり、カッコイイサイトにしたりとかそういった事に関しては彼らは最強の集団です、これはマジで太刀打ちできない。
どれくらい太刀打ち出来ないかっていうと、もう彼らがやったって言うだけで5割はカッコイイ。5日悩んでマウスで一本直線をひいただけでアワード間違いなしww*9

彼らはカッコイイ物を作る事に本気で命を削っているので、コードがどうとか効率がどうとか新しいjsライブラリがどうとかはかなりどうでもよく、むしろそんな物はいらないのです。


センスです、彼らのセンスは値千金なのです。

結果として出来るサイトはカッコイイので、ウケがいいです。


後、前述しましたが、何を作って良いのかさっぱりわからんという時にもやはり彼らは強いです。

特に漠然とリニューアルしたい、というような目標のない投資を行うときに、これはでかい。
サイト制作会社の営業はとてもすばらしい絵を描き、それを提案してくる。


まあ…

そもそもの金がないとお断りしてくるんですけどねw
すげー単価たかいよ、元請けなら。
下っ端は酷いけどwww広告ってホントナカヌキの世界ですよwww


後、つまんない仕事は蹴る、ってのも売れっ子会社なら当然みたいですよ。まあエコシステムの上空からおしつけるように来るらしいですが。


そういえば、なんでCMSなんかで作ったのかって?

最後になっちゃいましたけど。

最近(といっても結構前からだが)サイト制作会社の間でアツいのはCMSなんです。
だって絵と簡単なHTMLしかかけないようなデザイナー?が動的なサイトつくれる、しかもお客に更新の勉強会をひらかずにすむ。

CMSはサイト制作会社にとってはかなりの聖杯だった。


ただ、過信してるなーとはおもうけどね。CMSで出来ない事はない位の勢いがあるみたいだし。
やってやれないとまではいわないけど、それはねーよwwww

*1:例外も多いけど

*2:まあ、これが本見積もりと価格変更しない、というのはざらだが

*3:とはいえ、近年は派遣崩れみたいな会社がよりあい、元請けとして仕事して利益を上げようとしてできたクソ製造器みたいな会社もあるのだが、どことはいわないが

*4:広告業界でデザイナーやってたような人間が関わってたりするので、当然っちゃ当然なんだが

*5:…まあ無い所もあるが

*6:まあ作業者単価が安く、多少プレミアムがのってる事が多いので、アレなのですが…。ここでのプレミアムは運用含めてグロスで考える

*7:まあ普通の開発会社だってどうだって話はあるんですが、コーダーしかやっていないと、ディレクター等になることは本気で不可能に見えます。一生現役になるしかない。

*8:デザイナーの人間って修行は好きでも勉強が嫌いらしく、本よんだらすぐ理解できそうな事でもやりたがらない…謎すぎる

*9:冗談みたいに書いてますが、ある意味本当