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150万かぁ…高いのか安いのかよくわからん

Winnyの判決で色々言われているけれど、あれが何故有罪になったかと言えば、金子さんの脇が甘かったという他ない。
「既存のシステムを壊す」とか、あんな主張を初期でやっていたりしなきゃ裁判の行方はわからなかったと思う。
ただ結果として、脇が甘かったおかげで色々助かったかなーとは思う。彼が悪いのであってP2Pが悪いとは言われなかったから。

「今回の判決で(P2P)技術が!」とか言われているが、作った経緯にやましい所があったかどうかが問題になっていて、技術なんかどうでもいい判決であったので(と受け取っているので)、「技術自体の善悪」まで踏み込まれなかったのはむしろよかった。

技術を作る人間にはやっぱりモラルが必要だ、それが先進的なら使う人間以上に必要だろう。
(ここではモラルが具体的にどうあるべきかは考えないが、既存社会への影響を考える事は重要だろう)


でも、技術には善悪がない!とか書いている人がいるのだけれど、っつーかヘタに「Winnyソフトウェア自体が悪」とか結論だされたらみんなどーするのよとか思った。まさか「善」とか「悪じゃない」って判断が出てくると思ってた?
「有罪判決なら包丁だって有罪だ!」とか言う人もいるが、技術ってのは包丁とか個々の物ではなくて、鉄で刃物を作る事などを指すだろうし、その成果物は万別で、たとえばサバイバルナイフや日本刀といった「殺傷性」を高くした刃物は、いわゆる「凶器」とも呼ばれている。
Winny位はっちゃけたP2P技術の成果物自体は問題視されてもまったくおかしくないと思う、結果それの所持自体が非合法化する事を含めて。


ただ「規制が行われる」のはたしかにデリケートな問題だ。

100km/h以上出せる道が日本にないから、バイクは100kmのリミッター付けるべき論がある、でもそんな制限かけられたバイクはバイクじゃないと多くの人が思うし、メリットデメリットがあるから(メリットが自分勝手な物だとしても)100kmでリミッターは掛からない。
ただ、それでも限度はあるので現在の国産市販車は180km/hでリミッターがはたらく事になっている(180の根拠は今ではへりくつ)。

エアガンの威力はメーカーの自主規制だけだったが、最近規制が行われ1J以上は違法になった。パーツが充実して軽く改造するだけで殺傷能力のあるハイパワーになるからだ。これはエアガン界(メーカー、ショップ、ユーザー)の悪ノリがすぎた例だろう
1Jなんてふにゃふにゃで面白くねーよという人も多いが、実際エアガンで事件が多発するのは問題だ(いくらザル法だとしても、ハイパワー銃はダメだと社会が決めたと言う事だ)。

ここら辺は社会が「気を利かせてくれてる」例だと個人的には考えている。


Winnyだってこう言う規制や自主規制の狭間に居るのが自然な姿だと思う。有る程度配慮したものであれば、有る程度脱法的な事ができてもみのがされたかも。
そんななまぬるい、政治家みたいなことやりたくねーよというのが急進的なネットユーザーの意見だろうが、ネットも現実で有る限りやはり有る程度従わざるを得ない(ごまかしつつ上手くやるのが現実だろう)。


今回は革命的な事を被告人はやりたかった、でもそんなストレートにやっちゃいけなかったんだよ。
エロ本とかで「芸術だ!」といいつつギリギリの線を探った様に、じわじわとやらなきゃダメだろう。

正直、いまだにネットに幻想を見ている人が多いんだな、と思った、ネットも現実ですよ。

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似た頃に、規模は全く違うが、VPNソフトのSoftEtherという物があった(現在Packetixとかいう名前)。
これも結構キワ物なソフトで、FW中(社内ネットなど)から簡単に個人が外とVPNを張ることができるソフトで、システム管理者泣かせな代物。一時会社のPCから自宅のPCに勝手にネットワークを張る事が流行った。
中から外に勝手にネットワークを接続されたらネットワーク運営側からすればたまったものではない。セキュリティは下がるし、そもそも動機や目的は仕事以外だろうから経営者から見れば損失だ。


このソフトの場合、HTTPS通信上でVPNが張れる(殆どのFWはさすがにHTTPS通信くらいは許可しているので、防げない)のが特に問題となった。
このソフトを問題視するはずのシス管の中にも、技術的な側面で「これは便利だ」という人がでたくらいこのソフトがVPNソフトウェアとしては画期的に優れていたこともあり、安易にソフトウェアを責めるべきではない、という風潮にもなった。

もちろん真面目なシス管で「困る!公開をやめてくれ!」ともっともな意見を持つ人もおり、このソフトのメリットデメリット、そして作成者とユーザーのモラルが一時議論になったのだ。


で、最終的にどうしたのかといえば、自社でSoftEtherをブロックするソフトをだしたのだ。
http://www.atmarkit.co.jp/news/200408/31/softether.html


つまりこのソフトウェアを使わないという選択を尊重した。文句を言ったシス管に解決策を渡したのだ。

どこからでも繋がる、というSoftEtherからすればこういったブロックソフトはその本質的な便利性は落とすが、目的としては正々堂々使うはずというポリシから見てそう言った策を提供した。


Winnyにも、こういったる姿勢が少なくとも必要だっただろうと思う、たとえば流れているソフトの著作権者が文句を言えるような。逆にポエムだけを送信するモードがあれば誰にも文句はいわれなかっただろう。

ただ、結局そう言った手段は提供されなかった。

その難易度が高いからといって、用意しなかったが故に「良い事にも使えるソフトWinny」は「良い事に使えるWinny」に「しなかった」といえる。

まあ、現実問題からすればそんなのどうやって実現するんだって話になるのだが、しかたない、P2Pはそう言う側面を持っている技術なのだから。


で、その難しい側面を無視してしまった技術は普及させても良い技術と言えるのだろうか?